
月3件の新規依頼を生む!訪問歯科のマーケティング設計図
目次
1. なぜ今、訪問診療の“設計図”が必要なのか
外来の限界と訪問ニーズの拡大
外来診療が順調に推移しているにもかかわらず、「この先もこの体制でやっていけるのか」と不安を口にする歯科医院が少なくありません。人口減少と高齢化が加速するなか、来院数の頭打ちや診療単価の抑制、スタッフ採用の難しさなど、目には見えにくい経営リスクが静かに進行しています。
その一方で、通院が難しくなった高齢患者が、十分な口腔管理を受けられないまま生活している現状があります。こうした人々に継続的なケアを届ける手段として、訪問診療の重要性が年々高まっています。
とはいえ、訪問診療を単なる「応急処置の延長」としてとらえていては、次の依頼にはつながりません。一度限りの訪問で終わるのではなく、患者の暮らしに寄り添い、支援者と連携しながら、継続的に価値を届けていくことが求められています。
そのために必要なのが、地域との接点の築き方、継続支援の体制、信頼される情報発信などを一体的に設計する“訪問診療の設計図”です。これは、集患や営業といった言葉で語られるものではなく、「信頼の構築プロセス」を見える化し、実行可能な形に落とし込んでいく取り組みです。
本稿では、月3件の新規依頼が自然に届く医院づくりを目指し、その設計図を段階的に描いていきます。訪問診療を単なる補助的な診療ではなく、地域とともに歩む診療の柱として位置づけていくために、今こそ戦略的な構築が必要です。
2. マーケティングの前提としての医院体制の確認
訪問診療の“土台”をどう整えるか
地域からの依頼が自然と届くようになるためには、まず医院の内部体制が整っていることが前提となります。特に訪問診療においては、外来とは異なる準備と覚悟が必要です。体制が不十分なまま開始すれば、対応に追われ、信頼を損なうリスクも高くなります。
訪問診療には、「突発的な対応に終始するフロー型」と「継続的な関わりを軸とするストック型」という2つの姿があります。前者は単発の応急処置で終わるため、次の依頼にはつながりにくく、診療の安定性も得られません。一方で、後者は一人ひとりの患者と継続的に関わるスタイルであり、信頼関係が蓄積され、やがて地域全体との連携に発展していきます。
ストック型を実現するためには、医師や歯科衛生士の役割分担、必要な書類や器材の整備、スケジュール管理の工夫など、医院内の仕組みを丁寧に設計することが欠かせません。訪問件数が増えるほど、その設計の質が問われるようになります。
また、院内だけで完結しないのが訪問診療の特徴です。連携先となるケアマネジャーや施設職員との情報共有体制、急変時の対応プロトコル、支援者との連絡帳など、外部との関係性を支える仕組みも、院内体制の一部と捉えるべきです。
月3件の新規依頼を安定的に受けていくには、「いつでも受け入れられる状態であること」が最低条件になります。そのための準備こそが、地域からの信頼と継続的な関係構築の第一歩となるのです。
3. 「なじみの患者さん」から始める外来⇄訪問連携
通院できなくなったその時に、どう応えるか
訪問診療を軌道に乗せる際、まったく新しい層に働きかけようとすると、大きな労力が必要になります。しかし実際には、すでに医院にとって最も信頼関係がある「なじみの患者さん」が、訪問診療の入り口になることが少なくありません。
長年、定期的に来院していた患者が、ある日を境に来られなくなる。通院が難しくなるきっかけは、入院、転倒、家族の介護負担など、さまざまです。そうした変化を見逃さず、外来から訪問へと自然に移行する仕組みを備えておくことが、最初の依頼を確実に受け止めるうえで非常に重要です。
たとえば、来院頻度が落ちた高齢患者に対して、「最近お見かけしませんが、お変わりありませんか?」という一言から、状況を丁寧に確認していく。場合によっては、受付や衛生士から電話で体調を伺い、「訪問という選択肢もあります」と案内することもできるでしょう。
また、リーフレットやポスター、会計時のチラシなどを通じて、「通院が難しくなったらご相談ください」と日頃から情報を伝えておくことも有効です。こうした接点づくりが、患者やそのご家族の安心感を育み、「頼ってもよい医院」としての認識につながっていきます。
訪問診療は、まったく新しい患者を“開拓”するものではありません。すでに築かれた信頼関係を土台として、「通えなくなったそのときにも支え続ける」体制を整えること。それが結果として、地域の支援者や他の患者への波及的な信頼形成にもつながっていきます。
4. 紹介が自然に集まる地域関係者とのつながり方
信頼される存在になるためにすべきこと
訪問診療を継続的に成長させていくためには、地域の支援者とのつながりが欠かせません。とりわけ重要なのは、ケアマネジャー、施設職員、医科の主治医など、日常的に高齢者の生活に関わっている他職種との関係です。彼らとの接点をどう築き、どう信頼を得ていくかが、紹介件数の差となって表れます。
まず意識したいのは、「歯科の情報は、待っているだけでは届かない」ということです。支援者の多くは医療職ではないため、歯科の専門性や対応可能な範囲について具体的なイメージを持っていません。だからこそ、訪問時のやりとりや提出する文書の中で、何ができて、どんな結果が得られるのかを丁寧に伝える工夫が求められます。
また、定期的に訪問している患者のケアマネジャーに対し、診療内容や変化を簡潔に報告するだけでも、関係性は大きく変わっていきます。「あの先生は、ちゃんと見てくれている」「必要なことを、こちらにも共有してくれる」——そんな印象が次の紹介につながるのです。
施設との関係構築では、初回訪問時の態度や、緊急時の対応、感染対策への配慮など、日々の積み重ねが評価に直結します。ときには「勉強会をお願いできませんか?」と依頼されることもありますが、それは信頼の証と受け止め、積極的に応じるべき機会です。
地域関係者とのつながりは、広告や営業では得られません。むしろ、誠実な姿勢と確かな対応力があれば、自然と口コミは広がっていきます。自院がどのように貢献できるかを相手の視点で考え、関係性を“育てていく”こと。それが、紹介が自然に集まる訪問歯科の第一歩となるのです。
5. “来てもらう”から“呼ばれる”へ:仕組みの工夫
紹介が生まれる流れを設計する
訪問診療における“集患”は、外来診療とはまったく異なる仕組みで成り立ちます。看板やホームページから直接問い合わせがあるケースは少なく、ほとんどが紹介や相談をきっかけとした「呼ばれる関係性」によって成り立っています。だからこそ、目指すべきは「こちらから動かずとも依頼が届く」状態をどうつくるか、その仕組みづくりです。
第一に重要なのは、信頼してもらえる情報発信の工夫です。たとえば、ケアマネジャーや施設職員に渡す資料は、診療内容だけでなく「どんな人に、どのようなタイミングで相談してほしいか」が具体的に伝わる内容であることが望まれます。「よくある相談事例」や「対応可能なケース一覧」なども、判断の助けになります。
次に、関係者との接点を意図的に設けることが有効です。地域のサービス担当者会議、勉強会、施設内の研修などに参加し、自院の取り組みをさりげなく紹介できる場を確保していく。無理に売り込むのではなく、「必要があれば相談してみよう」と思ってもらえる関係性を築くことがポイントです。
さらに、実際に関わった患者に対する対応が、次の紹介の呼び水になります。初回訪問後の丁寧な報告、状態改善の小さな成果、連絡のしやすさ——こうした細やかな積み重ねが、支援者の記憶に残る「安心して依頼できる医院像」を形づくります。
訪問診療においては、目立つことよりも「忘れられないこと」が大切です。日常の中に自然と入り込み、信頼され、頼られる。そんな関係性を仕組みとして設計していくことで、医院は“呼ばれる存在”へと成長していきます。
6. 実例から学ぶ:依頼が増える医院の共通点
信頼と継続の“結果”として紹介は生まれる
訪問診療の依頼が安定して届いている歯科医院には、いくつかの共通点があります。それは、特別なテクニックや派手な宣伝ではなく、日々の診療や連携のなかで信頼を積み上げる工夫をしているという点にあります。
ある歯科医院では、「まずは3人のケアマネジャーと信頼関係を築く」という方針のもと、地域包括支援センターに顔を出し、紹介先の患者について丁寧な報告と情報共有を続けました。特別なことはしていませんが、「あの先生にお願いすれば安心」という評価が定着し、やがて紹介の連鎖が生まれていきました。
また別の医院では、訪問先の施設ごとに「診療の見える化」を意識し、訪問内容や今後の計画を定期的に報告書としてまとめ、職員との共有を徹底しました。結果として、施設側が安心して患者を任せられる環境が整い、診療対象が自然と広がっていったといいます。
共通しているのは、「一つひとつの診療に誠実に向き合う姿勢」と「支援者が求めている情報や対応を汲み取る力」です。そして、それを組織的に継続できる“体制”が整っていること。訪問診療は属人的になりやすい領域だからこそ、医院としての方針と仕組みが重要になります。
月3件の依頼を生むには、月3件ぶんの“感謝と信頼”が生まれるような行動を積み重ねていく必要があります。即効性はなくとも、結果として紹介が生まれ、地域の中で選ばれる医院へと育っていく。その実例が、何よりのヒントになるのです。
7. 数字に振り回されない持続的なマーケティングへ
「成果」ではなく「信頼の蓄積」を指標にする
訪問診療の依頼数を増やそうとすると、つい「月○件」「前年比○%増」といった数字に意識が向きがちです。しかし、数字ばかりを追い求めると、短期的な成果にとらわれてしまい、本来大切にすべき関係性や信頼の構築がおろそかになる危険があります。
持続的な依頼の流れを生み出している歯科医院は、例外なく「数字の背景にある人間関係」に目を向けています。たとえば、1件の新規依頼の背景には、数カ月前の電話対応、初回訪問時の態度、提出した文書の丁寧さが積み重なっている。つまり、すべては“蓄積”の結果なのです。
この蓄積を大切にする医院では、スタッフ全員が「紹介される理由」を自覚し、それを意図的に育てていくように努めています。紹介してくれた支援者へのお礼、継続的な情報提供、困ったときに相談できる関係性——それらを大きな予算をかけることなく日常業務の中で回していく工夫がなされています。
数字を見ないということではありません。むしろ定点観測としての数値は重要です。ただしそれを「成果」ではなく「関係の健全度を測る指標」として扱う視点が求められます。そうすれば、たとえ紹介件数が一時的に減ったとしても、次に何を育て直せばよいかのヒントが見えてくるはずです。
訪問診療のマーケティングは、“顧客獲得”という発想ではなく、“関係の持続と深化”を前提とした取り組みであるべきです。目先の数字に一喜一憂するのではなく、信頼の濃度をじっくりと高めていくことが、結果として持続的な依頼の流れを支える基盤になるのです。
8. まとめ:地域に根差す訪問歯科の第一歩として
診療の枠を超えた関わりが、信頼を育てる
ここまで、月3件の新規依頼を生む訪問診療の「設計図」について、体制・関係性・仕組み・姿勢の面から整理してきました。そこで一貫してお伝えしてきたのは、訪問診療とは単なる診療手段ではなく、地域との関係を築いていく実践であるということです。
医院の外に出て患者に会い、支援者と連携し、継続的に診ていく。その過程で重要になるのは、治療技術だけではありません。どのように相手の困りごとに応えるか、どのように情報を伝えるか、そして何より「この先生に任せたい」と思ってもらえるかどうかが試されます。
つまり、紹介が生まれるかどうかは、診療の質だけでなく、「医院としての姿勢」の表れなのです。来てもらうのではなく、呼ばれる存在になる。そのためには、誰に、何を、どう伝え、どう動くかを意図的に組み立てていく必要があります。
訪問診療は、一人では成り立ちません。患者、ご家族、ケアマネジャー、施設職員、医科との連携——それらすべてが交差する中で、歯科がどのような役割を果たすのか。その答えを、地域とともに模索し続ける姿勢こそが、持続可能な依頼と信頼を育む土壌となるのです。
“月3件の依頼”という数字は、目標ではなく結果です。その背後にある日々の実践を見直し、整え、続けていくこと。それが、地域に根差した訪問歯科の第一歩になります。
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訪問歯科の新規依頼が「月3件」安定的に増えるとしたら、あなたの医院の未来はどう変わるでしょうか?
高齢化が進み、通院困難な患者が急増するいま、訪問歯科は確実に成長する分野です。
しかし、単に「訪問診療をやります」と打ち出すだけでは、安定した依頼は得られません。
地域の支援者から自然に紹介が生まれ、患者が抵抗なく外来から訪問に移行し、さらに「選ばれ続ける」医院になるためには、正しい仕組みと信頼構築の方法が必要です。
このレポートでは、
- 月3件の新規依頼を生む仕組み
- 地域との関係構築で紹介が自然に増える方法
- 依頼が安定する医院の共通点
を、具体的にわかりやすくまとめています。
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このレポートでわかること
- 安定的な依頼のカギは「信頼関係」
- 外来から訪問への自然な移行の仕組み
- 紹介を得る仕組み
- 選ばれる医院の共通点